2023年11月 アルゼンチン旅行記|⑸ 雨のブエノスアイレスとタンゴショー / ロマンチックな夜の楽しみ方

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ジャングルの中に佇むホテルの部屋の、バルコニーのドアを開けると、しっとりとした朝の空気が肌を包む。

空を見上げると、ほんのりとした橙色が滲み始め、夜と朝がゆっくりと入れ替わっていく。もう少しここにいたいけれど、出発の時間。

光を受けて輝く緑をもう一度振り返り、ホテルを後にした。

イグアスの滝国際空港。出発ロビーのカフェでカフェラテを注文し、窓際の席へ。ガラス越しの空はどこまでも澄んでいて、アルゼンチン航空の青い機体がその色と溶け合っている。スプーンでゆっくりとラテを混ぜながら、旅の余韻に浸る。

飛行機が滑走路を走り出す。軽く目を閉じると、ふわりと身体が浮き上がる感覚が広がった。眼下に広がるジャングルの緑が、ゆっくりと遠ざかっていく。

雨のブエノスアイレス

ブエノスアイレスの空は、どんよりとした雲に覆われていた。ホルヘ・ニューベリー空港に降り立ち、タクシーに乗る。ダウンタウンが近づくにつれ、窓に雨粒が静かに落ち始めた。

ホテルに戻り、部屋の窓から通りを見下ろす。濡れた石畳にタクシーの黄色が滲み、歩道には傘を差した人々が行き交う。雨に濡れたビルの壁が、どこかノスタルジックな雰囲気を帯びていた。

ワインとステーキとタンゴ、タンゴポルテーニョで過ごすブエノスアイレスの夜

今夜の目的地は、Tango Porteño。古き良きブエノスアイレスの華やかさを受け継ぐ、格式あるタンゴの劇場。
この街の夜が、またひとつ特別なものになりそうな予感がした。

扉を開けると、そこに広がるのは、情熱と美が交差する世界——

赤いベルベットのカーテン、優雅に灯るシャンデリア、テーブルに並ぶワイングラスの輝き。

ワインを片手に、ディナーが始まる。

最初に運ばれてきたのは、黄金色に焼き上げられたエンパナーダ。フォークを入れると、薄く香ばしい生地がほろりと割れ、中からはじんわりと広がる肉の旨み。熱を含んだ香りがふわりと立ちのぼる。ワインをゆっくりと口に含み、静かに目を閉じる。

メインのビーフステーキが運ばれてきたとき、照明が落ち、ステージの幕が上がった。

タンゴのショーが始まる。

バンドネオンの旋律が空気を震わせ、ダンサーたちが情熱的なステップを踏む。光と影のコントラストが、彼らの動きをよりドラマティックに映し出していた。

最後の曲は、リベルタンゴ。

イントロが流れた瞬間、客席がざわめき、歓声が上がる。

旋律が情熱と哀愁を帯びながら、タンゴの世界を紡いでいく。ダンサーたちの動きはしなやかで、視線が引き寄せられる。
その美しさに、ただ静かに見入っていた。

ショーが終わり、静かにグラスを傾ける。マルベックの深い香りとともに、タンゴの旋律がまだ心の奥で揺れている。
劇場を出ると、雨に濡れたアスファルトが灯りを映し、しっとりと輝いていた。

Tango Porteño

旅はまだ続くけれど、この夜の余韻は、しばらく心から消えそうにない。

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