冬の外苑前は、少し静かだ。
銀杏並木の葉はすっかり落ち、枝だけになった木々が並ぶ。それでも、この景色が嫌いではない。余計なものが削ぎ落とされた冬の並木道には、凛とした美しさがある。冷たい空気を感じながら、ゆっくりと歩く。
向かうのは、KIHACHI 青山本店。寒い日のランチは、温かく丁寧に作られた料理を、ゆっくりと味わいたい。
今日は、季節の食材を楽しめるシーズナルランチを選んだ。
前菜3種盛り合わせ
最初に運ばれてきたプレートは、見た目も華やか。
那智勝浦直送の魚と彩り大根のサラダは、透き通るような魚とシャキシャキの大根が、爽やかなドレッシングと調和している。
隣のスモークチキンと白菜のシーザーサラダは、スモーキーな風味が程よく効き、チーズのコクが全体をまとめている。
そしてオニオングラタンスープ。こんがり焼かれたチーズの下に、甘みが溶け込んだスープ。スプーンを入れると、ふわりと香ばしい香りが広がる。
魚料理:ブリのスパイス焼き 冬野菜のバターソテー添え
パリッと焼かれた皮と、しっとりした身のコントラストが楽しい。
ふんわり香るスパイスが心地よく、冬野菜のバターソテーがまろやかな甘みを添えている。
レモンをひと絞りすると、味にぐっと締まりが出る。
肉料理:牛肉の網焼き 栗の実ラビゴットソースと下仁田ねぎのロースト
絶妙な焼き加減で、ナイフを入れるとしっとりしたピンク色の断面が現れる。
ラビゴットソースの酸味と栗の甘みが、牛肉の旨味を引き立てる。
ローストした下仁田ねぎは驚くほど甘く、余韻が長く続く。
魚と肉、それぞれに異なる魅力があり、最後まで飽きることなく楽しめた。
KIHACHIのナポレオンパイ ~まりひめスペシャル~
今回のランチの一番の目的は、このナポレオンパイだった。
軽くフォークを入れると、繊細なパイ生地がサクッと崩れる。
なめらかなクレーム・シャンティとディプロマットクリームが苺と絡み、噛むたびにふんわりとした甘さが広がる。
主役の「まりひめ」は、和歌山県オリジナルの苺。酸味が穏やかで、果汁が豊か。
パイとクリームのバランスを壊さずに、しっかりとした存在感を残している。
仕上げにかけられたキャラメルソースが、ほのかにビターなアクセントになり、全体を引き締めている。洗練された味わいの、大人のためのデザート。
食後のコーヒーを飲みながら、窓の外を眺める。枝だけになった銀杏並木が、静かに続いている。それでも、この冬の風景が、今は心地よく感じる。
ナポレオンパイの苺の品種は、2月からあまおうに変わるらしい。次はどんな味に出会えるだろう。