庄内旅|⑵ 鶴岡・スイデンテラスで味わう庄内鴨ローストのディナー

グルメ
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加茂水族館を後にして、タクシーは田園風景の中を走る。

窓の外には、刈り取り前の稲が風に揺れ、傾きかけた陽を受けて、やさしく金色に光っていた。

しばらくして、田んぼの真ん中に浮かぶように、スイデンテラスの建物が現れる。

ガラスの壁が空の色を映し、一日の終わりを静かに受けとめているようだった。

ーーー

夜。

レストラン〈Moon Terrasse〉の扉を開けると、木の香りとあたたかな照明が迎えてくれた。

窓の向こうに静かな田園の闇が広がっている。

最初の一皿は、お米を使ったアミューズ。

香ばしい衣の中から、ほのかな甘みが立ちのぼり、この土地の実りをやさしく感じさせてくれる。

続く季節の鮮魚のマリネは、やわらかな酸味のドレッシングとともに。

ひとくち味わうと、昼間に見た海の青さがふと蘇るようだった。

魚料理は、庄内産の真鯛のポワレ。

香ばしい皮目に焦がしバターの香りが重なり、酒粕のまろやかなソースがその甘みをやさしく包む。

グラスの白ワインが静かにその余韻を広げた。

メインは、庄内鴨のロースト。

ナイフを入れると、ほのかな赤がのぞき、果実の酸味と鴨の香ばしさ、そして赤ワインの深みが、口の中で静かに重なっていく。

続いて、庄内産つや姫のおむすびと地魚の出汁。

出汁のやさしい香りがふわりと広がっていった。

デザートは、リンゴとローズマリーのタルト。

アーモンドのフロランタンが添えられ、ほろりと崩れるタルト生地に、ハーブと果実の香りがやわらかく重なる。

食後のコーヒーを飲みながら、窓の外を見ると、田んぼの向こうにぽつりと灯りが見えた。

その光が、夜の静けさの中でゆっくりと揺れていた。

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