スイデンテラスの朝は静かだった。
窓の外、黄金色の稲が光をまとっていた。

お昼前、鶴岡をあとにして、各駅停車で酒田へ向かう。
窓の外を、静かな町並みがゆっくりと過ぎていった。
列車の揺れが、心地よく身体に伝わってくる。

駅からまっすぐ港の方へ歩く。
川の向こうに、黒い板壁の倉が並び、白い漆喰の壁が光を返していた。

北前船で栄えた港町に残る、山居倉庫。
明治時代、旧庄内藩主・酒井家の援助によって建てられ、酒田米穀取引所の付属倉庫として使われていた。

黒い板壁と欅並木がつくる静かな風景の中を歩くと、今もこの町の記憶が息づいているように感じた。
木漏れ日が壁を照らし、ゆるやかな時間が流れていく。
金色の田んぼと、黒い倉の陰影。
その静かな対比が、心の奥にしずかに残った。
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