お昼過ぎ、鶴岡駅のロータリーでタクシーを降りた。
羽黒山の森を抜けてきたせいか、街の空気がどこか柔らかく感じられる。
通り沿いの果物屋のショーケースには、季節のタルトが並んでいた。柿や葡萄の瑞々しい色が、小さな宝石のように光っている。

旅の途中で見つけたその甘さは、ほんのひとときの休息のように心に残った。
フルーツショップ青森屋
山形県鶴岡市の「フルーツショップ青森屋」...
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そのあと、鶴ヶ丘城址公園の隣にある致道博物館へ。
旧藩主の屋敷跡や明治の洋館が点々と並び、どの建物も時を重ねた静けさを纏っている。


洋館・「旧西田川郡役所」の一室では、精巧なドールハウスが展示されていた。
窓の奥に小さなテーブルとティーセット。灯りがともると、まるで遠い時代の生活が息づくようだった。


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日が暮れ、通りの灯りがともるころ、鮨屋に入った。
檜の香りとやわらかな灯り。


静かなカウンターで、庄内の海の魚が一貫ずつ握られていく。


昨夜のディナーで久しぶりにワインを飲んで、鶴岡の夜をもう少しだけ解禁したくなった。ほどよい静けさの中、ソーバキュリアスの封印をもう一度だけ解いた。

グラスの中で冷酒が揺れ、淡い香りとともに、旅の夜がゆっくりと更けていった。

