湯田中温泉の心地よい温もりをまとったまま、長野電鉄に揺られて小布施へ。車窓には、赤く実ったリンゴの木々が続き、秋の穏やかな景色が広がる。その風景を眺めているうちに、電車は小布施駅に到着。この日はまだ少し夏の暑さが残っており、駅を降りた瞬間、暖かな日差しが心地よく包み込んでくれる。
駅から歩くこと10分、小布施堂本店が姿を現す。瓦屋根の重厚な建物に、「朱雀」と大書された垂れ幕が揺れている。今年もここでしか味わえない秋の特別な味。今日はこの「ランチのコースでゆっくりといただく予定。
のれんをくぐると、静かな和の空間が広がり、心がそっと弾む。予約の時間に合わせて奥のレストランへ。心地よい静かな時間、いよいよ最初のお料理が運ばれてくる。
一ノ膳
- 菊和え
- 栗の茶巾絞り 葛仕立て
- 牛肉の炊き合わせ
季節の香りが詰まった三品。さっぱりとした菊和え、栗の甘みが優しく引き立つ茶巾絞り、そしてしっとりと煮込まれた牛肉の炊き合わせ。
二ノ膳
- 栗ごはん
- あさり真丈の椀
ふんわり炊かれた栗ごはんが、自然な甘みをほんのりと漂わせ、出汁がじんわり染みたあさり真丈が心を温めてくれる。
三ノ膳
- マンゴーソースのデザート
- 栗の点心「朱雀」
そして、いよいよお目当ての「朱雀」が登場。細く繊細に削られた栗のペーストがふんわりと積み重なり、口に運ぶと栗本来の風味とほのかな渋みが広がる。食べ進めると中からほんのり甘い栗餡が顔を出し、栗の持つ自然な味わいが重なり合う。素材の味を引き立てるシンプルさが、心まで満たしてくれる。
まるで秋そのものを味わっているかのような特別なひととき。期間限定でいただける2024年の「朱雀」は、10月16日で終わりを迎えた。また来年、この季節ならではの味との再会が待ち遠しい。
栗菓子の小布施堂(オブセドウ)
栗と北斎と花の町信州(長野県)小布施にて...