古事記にも登場する日本最古の神社、諏訪大社を訪れてみたくなり、中央本線の上諏訪駅に降り立ちました。
今夜宿泊する旅館が無料の参拝バスを運行しているとのことで、諏訪湖畔の鰻屋で昼食後、さっそく乗り場に向かいました。この黄色いバスで3時間ほどで諏訪大社四社をすべて廻り、降り立った先では運転手さんがガイドもしてくれます。
諏訪大社は、上社の前宮(まえみや)と本宮(ほんみや)、下社の春宮(はるみや)と秋宮(あきみや)の四社からなり、諏訪湖をはさんで南岸に上社、北岸に下社が鎮座しています。
上社前宮
旅館を出発し上諏訪駅で乗客を拾ったあと、上諏訪駅がある諏訪市の南、茅野市まで20分ほどバスに揺られ、四社巡り最初の目的地、上社前宮へ。
春宮は山の中腹にあり、鳥居をくぐってから本殿まで木々に囲まれた長い坂道が続いていますが、今回は本殿そばの駐車場までバスで登りました。
本殿があるのは四社の中では前宮だけで、本殿と呼ばれる建物が無いのが諏訪大社の特徴です。本殿の代わりに、上社本宮では御山、下社春宮と秋宮では御神木を御神体としています。
諏訪大社には、四社それぞれに4本、合計16本の樅(もみ)の木の御柱が建てられています。屈強な男性たちが大木に跨り豪快に坂を下る「御柱祭」に使われる、あの御柱です。
御柱は、社殿を囲むように右手前から時計回りに4本、右手前から一之御柱、二之御柱、三之御柱、四之御柱の順に配置されています。
こちらは前宮四之御柱。
帰りはバスが待機している鳥居のそばの駐車場まで坂道を歩いて下りました。視界には茅野の街並みが広がります。
上社本宮
次の訪問地は、前宮からバスで5分ほどの距離にある、下社本宮です。
北参道から大鳥居をくぐると、左手に「明神湯」と呼ばれる手水舎がありました。お清めは水…ではなく、なんと、流れているのは温泉です。
熱い温泉でお清めをして、まっすぐ拝所へは進まず、案内板に従い境内を左へ折れ、東参道の方に来ました。東参道は、お土産物屋が立ち並ぶ北参道とは趣きが異なり人もまばらで、どことなく寂しさが漂いますが、かつてはこちらが正式な参道だったようです。
青銅の二之鳥居の手前には御手洗川に架かる橋があります。鳥居の向こうには、重要文化財に指定されている「入口御門」が見えます。
入口御門の先には、「布橋」と呼ばれる庇のある回廊が拝所のほうまで続いています。
拝所。この奥が重要文化財の弊拝殿です。
諏訪大社のご神紋、梶の葉です。
下社春宮
諏訪湖を左手に見ながら、またしばらくバスに乗り、上社からは諏訪湖を隔てた、諏訪盆地の北の端に鎮座している下社に向かいます。
下社は春宮と秋宮からなります。毎年「遷座祭」がとり行われ、2月1日に秋宮から春宮へ、8月1日には春宮から秋宮へ、御霊代が移されます。
次に訪れたのは、四社の中でいちばん北に位置する、下社春宮です。
弊拝殿。重要文化財に指定されています。
立派な注連縄がある神楽殿。こちらも重要文化財です。
一之御柱。
神楽殿の右手に立っている「結びの杉」。二又に分かれた木が根元でひとつになっていることから縁結びの杉と言われています。
下社秋宮
いよいよ最後の目的地、下社秋宮です。境内へ続く緩やかな石段は木々に囲まれ、四社の中でもひときわ神秘的な雰囲気です。
弊拝殿。重要文化財。
左右片拝殿。重要文化財。
弊拝殿も片拝殿も、春宮と秋宮でほぼ同じ形をしているように見えますが、実はどちらも同じ図面を元に建てられたものだそうです。ただ、それぞれ別の大工が技を競って建てたため、細部に違いが見られるとのことです。
片拝殿近くに立っている「天覧の白松」。普通の松は葉が2本ですが、3本の葉がついた珍しい三葉の松です。財布に入れておくとお金が貯まると言うご利益があるとのことで、はりきって落ち葉をかき分け探してみたものの、残念ながら見つけられませんでした…
重要文化財の神楽殿と大注連縄(おおしめなわ)。注連縄と言えばまず出雲大社が思い浮かびますが、出雲大社の注連縄を作った職人さんを呼び寄せて作らせたのが、この諏訪大社の大注連縄だそうです。縄を巻く方向は右から左へ、不浄のものが入ってこないように、一方、出雲大社は逆の左から右へ、不浄のものが出てこないように、との意味が込められています。
神楽殿前の狛犬。青銅製のものとしては日本一の大きさだそうです。
梶の葉のご神紋。上社と下社では根の数が異なり、上社は4本ですが、下社は5本あります。
境内の隅には梶の木が植えられていました。
紅葉の木の下にある「さざれ石」。君が代の歌詞のように、いくつもの小さな石が長い年月を経て凝結し、今の形になったことを伺わせます。
諏訪の神様のご神気をたっぷり感じた約3時間、四社巡り最後の訪問地、下社秋宮をあとにするころ、鳥居の向こうからは、まだ高い8月の太陽がこちらを照らしていました。
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